経済学の目次

久しぶりに、「ゼミナール 日本経済入門」という本を読んだ。
久しぶりといっても、まったく同じ本を読んだわけではない。この本は毎年改訂されている。
以前読んだのは学生時代、もう十数年前の話になる。
この間、日本経済がどう変わったのかと思い、ふと購入してみた。

ゼミナール日本経済入門 23版
日本経済新聞出版社
三橋 規宏

ユーザレビュー:
衰退からの脱却 成長 ...
一度は買って読むべき ...
毎年購入しています。 ...

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日頃読みなれている新書や文庫と違って値段が高い! というのは置いておく。PC 関連書籍と同じくらいの値段だから気にしない...(泣)。
大きくて重いので、読むのにちょっと時間がかかってしまった。この本、ボリュームまで考慮に入れると、決して新書や文庫よりも割高というわけではないのだ。

この本のいいところは、時事的な問題も、経済理論も一通り扱っており、一度目を通せば、日本経済の概略が一気につかめるところだ。とにかく日本経済に関する問題が網羅されている。
さらに、毎年改訂されているので、統計データは最新に近いものが使われているし、記事も最新の経済状況を踏まえてのものになっている。今年度版では既にサブプライム問題が扱われていた。ただし、さすがに経済は生き物なので、サブプライム問題に関してはたった半年で、この本は時代遅れになってしまったのだが。
加えてこの本、日本経済の現況を通じて、「経済学とはこういうことを研究する学問なんだよ」ということが体系的に分かるようになっている。十数年前、教授が喜んでこの本を学生に読ませていた理由が、今となってはよく分かる。この本は「経済学の総目次」にもなっているのだ。
現実と、理論と、さらにその関係とが有機的に理解できる。名著の類に入るだろう。

この本の欠点というか、こういった部分に注意しながら読まないといけないという部分もいくつかある。
まず、この本は純粋な解説書ではなく、ところどころ、執筆者の意見が書き込まれてしまっている。読者には「書いてあることを鵜呑みにしない」姿勢が求められる。統計データにしても、ちょっと油断していると...
また、この本、大きくて分厚いのだが、それでもまったく書き足りていない部分がたくさんある。それだけ経済問題は幅が広く奥が深いということだ。この本を読んだだけでは、経済学の超基本であるはずの、「需要と供給による価格形成のメカニズム」すら分からないだろう。分かったというなら、他で経済学をきちんと勉強したことのある人か、分かったつもりになっているだけのおめでたい人だ。
ケインズ政策の解説などは「おいおいおい、そこまではしょるか。理系の人間に見せたら鼻で笑われるような結論の出し方だぞ」と言いたくなるくらい省略が効いている。この本を読んだだけでケインズ政策を人に語ったりしないような慎重さが求められる。

というわけで、自分なりの意見がしっかりしていて、経済学について一通りの知識がある人にとって、この本は、「今の日本経済」を知るのに最適の本だろう。また、そのような人、たとえば大学教授などが身近にいるなら、この本は最高の教科書になるだろう。
指導教授がしっかりしているなら、経済学部の大学1年生には特にお薦めだ。

一方、一般の社会人が読むには、正直なところ、荷の重すぎる本だと思う。
が、1/3読みするだけでも、全く読んでない人とは大きな差ができるだろう。
1/3読みというのは、この本の各章の1/3だけ読むことをいう。
この本、11章構成で、各章がさらに必ず3部構成になっている。1部が「日本経済TODAY」、2部が「歴史・理論を学ぶ」、3部が「統計を読む」と統一されているのだ。この第1部、「日本経済TODAY」だけ読んでいっても、十分に面白くてためになる読み物であることに違いは無い。そういう読み方もありだとこの本の「はしがき」にも書いてある。

なお、ここ数週間で起こっている金融不安についての対策は、この本を読んだだけではさっぱり分からない。
ただ、いかに世の中の偉い人が「経済理論に通じていないか」がよく分かるようになるとはいえる。

もう一つ、私がこの本を読んだところ、「経済学を語る人はいかにいい加減か」を知らされた気がする。コンピュータ関係の図書と比較すると、他者の理論の引用の仕方や、グラフの描き方などがどうもいい加減なのだ。無難な前例を踏襲しているだけというか、「定番の解説方法」に安住してしまっているというか。
特に経済理論の部分では、前提が省略されすぎて、「何この虫のいい議論は」と言いたくなるような状態になっている。
この本だけを読むと経済学は「非現実的な前提と数学的論議だけにふける学問」(ジョーン・ロビンソン)だと思われてもしかたがないだろう。
まあ、そのような経済学を信用していた時代が私にもあったわけだが。

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