たまには恥ずかしい本を読んでみる

先週、妙に iPhone に関する話しを聞く機会が多かった。もちろん時期が時期だけに、ネガティブな話がメインだ。
どうしてあれほど騒いだ割に、日本では iPhone が売れていないのか。
そこで、そもそもあれだけ iPhone iPhone と騒いでいた人たちは、一体、どういう夢を見ていたのかということを知るために、この本を読んでみた。

iPhone 衝撃のビジネスモデル (光文社新書 302)
光文社
岡嶋 裕史

ユーザレビュー:
専門用語多すぎちょっ ...
iPhoneは、情報 ...
最先端トレンド解説技 ...
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1年以上前に出た本なので、この本で語られている将来予測の当たり外れについて論じるのは、後だしじゃんけんをしているようで気がひける。しかし、時にはこうやって過去を振り返ることも必要だ。

著者の岡嶋裕史氏は、情報セキュリティ関係の著書もあり、優秀で信頼のおけるライターの一人だ。「暗証番号はなぜ4桁なのか?」といった名著もある。私のようなにわかブロガーよりもはるかに冷静に IT 業界を観察している。
そんな岡嶋氏が iPhone にどのような未来を夢見たのか。
この本の目次に沿って見ていく。

第1章 iPhone の衝撃
第2章 Web2.0 の幻
第3章 ユビキタスの挫折
第4章 クール! iPhone のインタフェース
第5章 iPhone が拓く新しいビジネスモデル

この本は、第1章から第3章までが IT 業界、とくに通信分野の現状分析にあてられている。
いかにも岡嶋氏らしい分かりやすい分析で、ネットや PC、携帯電話の現状とその限界が明快に述べられている。
一部、第4章以降のための伏線が張られているがために、やけにユーザーインタフェースの話が多くなっているが、ともかく、第3章までは、非常によく出来た現状分析本であることに間違いはない。1年前の本ではあるが、その内容は今でも古くなってはいない。

そう、今でも古くはなっていないということは、問題が解決していないことを意味する。
すなわち、岡嶋氏が第4章以降で展望して見せた iPhone と、実際に日本の市場に姿を現した iPhone は全くの別物だったのである。第4章以降は、岡嶋氏が、iPhone はこんな携帯電話に違いないという夢語りの世界に入ってしまう。
というわけで、この本は第4章以降、今から読み直してみれば恥ずかしい内容のオンパレードになってしまうのだが、それでも、岡嶋氏の夢見た iPhone(≠実際の iPhone) には色々と参考になる部分が多いので、一度目を通しておいても悪くはないだろう。

「iPhone を通して見た東京タワーをクリックすることで、利用料金や混雑状況、イベント情報が表示され、チケットを購入することができる。チケットゲートは iPhone をかざすだけで通過する。」(同書籍より引用)

誰もが夢見ながら未だ実現していない夢の携帯電話の姿がそこには描かれていた。

どうして岡嶋氏ほどの人が、こうも冷静さを欠いた夢を書き連ねてしまったのか、理解に苦しむところは多々あるのだが、とにかく書いているのは岡嶋氏であるから、我々一般人が述べるよりもはるかに分かりやすく夢の携帯電話のあるべき姿をイメージすることができる。

しかし1年後の今となっては、もはやそれが iPhone でないことだけは確定してしまった。この夢を継ぐのは、Google の Android になるのだろうか、それとも、Windows Mobile がさらなる進化を見せるのだろうか。あるいは次のバージョンの iPhone か。
ここに日本メーカーの名前を挙げられないのが少し淋しい。この部分では私も岡嶋氏と同じ感覚だ。

結局、岡嶋氏が夢見たような iPhone が実現しなかったというのが、本書の一番困った点になるのだが、他にも岡嶋氏が、今回に限っては分析を誤ったなと思われる点がいくつかある。
iPhone のタッチパネルに目を奪われたせいか、「テンキーは操作しにくい。テンキーが携帯電話の弱点だ」などと書いてしまっているのだが、実際は、タッチパネルよりもテンキーのほうが、素早くメールが打てたりする。
そしてもう一つ、先日読んだ「グーグルに勝つ広告モデル」の著者も勘違いしていたようだが、人は何も金儲けだけが唯一の欲望というわけではない。金儲けにつながらないコンテンツはいずれ廃れるというような分析がされていたが、人には他にも、例えば目立ちたいだとか、社会的に認めてもらいたいだとかいったプライスレスな欲望も持っているのである。こういった欲望が生み出すコンテンツもたくさんあるのだ。たとえお金にならなくても CGM は成立しうるのである。

ところで、この感想を書く前に、参考までに Amazon のレビューを流し読みしてみたのだが、この本について、専門用語が多すぎて分かりにくいと書いている人がいた。
いや、そんなわけはないだろうと思うのだが、もしかしたらこれは意外と私などとは違う世界の人が読んでしまうタイトルの本なのかも知れない。

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