「失敗は予測できる」...天気予報程度の確率で

なかなか面白い本に出会った。「失敗は予測できる」というなかなか刺激的なタイトルに惹かれ、新書ということで値段もまあ手ごろだし、システム開発関連のことも少しは書いてあるということで買ってみた。内容的には、各論賛成・総論反対と言ってもいいくらい、コンセプト的に私の考えとは大いに異なっているのだが、「失敗学」を扱っている著者というだけあって、個別の事例が興味深かった。



世の中の失敗を分類すれば40少々のパターンに類型化することができるのだという。40少々ならばちょっと頑張ればそのパターンを覚えておくことができるし、何かを試みる際に、「これはその40パターンのうちの一つではないか?」と思い当たれば、それを回避する策を立てられるはずだというのが、筆者の主張だ。

なのだが、実際のところ、個別の失敗事例を類型化していく作業は比較的容易でも、類型化され、抽象化されたパターンから、これから起こる具体的な事実・事故を予測するのは、天気予報並に困難なのではないだろうか。大きく外すということはないにしても、100%の精度を発揮するのは無理だという意味合いで。
「人間はうっかりすることがある」というパターンを知っていても、そこから「マンホールのふたは丸くないといけない」という結論を導くのは、普通の人には論理の飛躍に見えるだろう。生まれて初めてマンホールのふたを作る人が、たとえ「人間はうっかりすることがある」ということを知っていたとしても、それを穴の中に落とすかもしれないと、そうそう容易に思いつくだろうか。「指を挟むかも知れないからその安全策を」などと考えるのが関の山ではないだろうか。マンホールのふたの話はまあ有名な部類ではあるが、それでも知らない人は知らない話だ。知らない人にとっては、それこそ事故が起こるまで結びつかない飛躍した論理の話なのだ。

以前、大学入試の数学の問題を調査して、やはり数十のパターンに分析し、この解き方のパターンをマスターしておけばどんな問題でも解けると主張している教授に出会ったことがある。その教授の著書に従って勉強した高校生は多いはずだが、名前は伏せておく。この教授の考え方は部分的に正しいのだが、大きく欠けている部分が一つある。このアプローチを成功させるには、目の前の入試問題がどのパターンの問題であるかを判断する能力が別途必要になるのだが、その対策が欠けているのだ。そして、その能力を訓練するには、今のところ筋道だった方法はない。経験を積む(数学の問題をたくさん解く)くらいしか方法がないのだ。

これと同じことが、この「失敗は予測できる」という主張にもあてはまる。100%ではないにせよ、あるていど失敗を予測できるようになるには、論理的な思考能力を否定はしないが、結局は、経験が頼りになってしまわざるを得ないというのが、私の考えだ。その経験の一環として、本書を読むことは大いに推奨したい。具体的な事例がたくさん掲載されている資料としてはありがたい。
また、失敗を100%予測できるようにはならないからといって、失敗を防ぐ努力を怠ってもいけない。一番ばかばかしいのは、ちょっと勉強しておくだけで防げたはずの失敗をしてしまうことなのだから(実際はこれがかなり多いのだけれども)。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック