電子出版についてちょっと調べた

フリーソフトウェアを配布する一方、自分は、著作物に関しては「何でもフリーにしろ」というような意見には常に賛同するわけではない。著作者(著作権者ではない)の意向が最大限に反映されていればいいと思う。
なぜ、このように思うかと言うと、自分が出版社勤めであるからよく分かるのであるが、「フリーにせよ」を強要することによって「それなら発表しない」と結論付けされるよりも、DRMをきっちり適用するから、限られた人に対してだけでも発表してもらったほうが世のため(そして私の給料のため)になるような著作物がたくさんあるのである。
公表してもらえるならば、著作者に対しては最大限の敬意をはらうというのが、私の基本スタンスだ。

というわけで、私が電子出版を語るにおいては、電子出版を促進するという意味でDRM抜きに語ることはできないのだ。

以上を前提に、電子出版において、どのようなファイルフォーマットが有意義なのか調査してみた。

・テキストファイル
閲覧容易であるが、デザイン的要素はなく、DRMも適用困難(コピー困難な細工を施したCD-ROMに焼き付け、専用ビューアーを用意するなどすればDRM的なことも可能)。

・HTML
閲覧容易であり、ある程度のデザインも可能。DRMは適用困難(媒体に細工してのDRMなら可)

・PDF
閲覧容易、といっても画面上よりはプリントアウトしての閲覧に適する。デザインは自由。そのままのPDFでは容易に複製されてしまう。
ただし、Keyring PDFなどの亜種を用いることでDRMの適用が可能。

・ebook
Adobeの策定した電子出版形式。閲覧容易で、デザイン自由。DRMの適用も可能。
だが、あまり売れなかったらしく、DRM用のサーバーソフトがもはや入手できなくなってしまっている。

・XMDF
SHARPが中心となって策定した電子出版形式。閲覧容易。PDAや携帯電話での閲覧に特に向く。データの複製は可能だが、誰が購入したコンテンツかの情報が埋め込まれるため、一定の抑止力はもつ。

・その他
CD-ROMの複製を困難にする技術と専用ビューアの組み合わせといったソリューションがある。が、この類は弱小資本のベンチャーによるものが多く、技術提供会社が消滅するというリスクを負うことになる。
他にも色々とソリューションはあるようだが、どれも今のところ、メジャーになりきれていない。


まあ、ざっくり調べると上のようになる。DRMは私の大好きな暗号技術がたくさん使われているので、それだけでも興味をそそられる。
ただ、インターネットを利用したDRMだと、サービスを継続させなければならないという、今時の出版社が最も不得手とする義務が生じてしまうという問題がある。出版社としては売り切って終わりにしたい、後々のサポートはなるべくやりたくないのだ。
となると、CD-ROM等の媒体に細工して複製できなくするのが、出版社にとっては大歓迎の技術ということになる。
媒体を暗号化する技術はよく聞くが、複製できなくする技術というのは、繰り返しになるがどれもベンチャー色が強く、会社消滅に伴い突然サービス提供不可能(増刷不可や、お客様からの問い合わせに答えられなくなる)に陥る恐れがあるようなものばかりである。

結局現時点において、これといった電子出版用のファイルフォーマットの決定打はない。
既存の出版社が電子出版に取り組むには、まだまだ技術未成熟といったところか。

...手をこまねいていると、DRMをあまり気にしない非出版系の企業の情報提供サービスに、既存の出版社のマーケットが奪われる(というか、そういう企業は無料で情報提供するので事実上マーケットが消される)ことになってしまうのだが。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2007年11月16日 11:34
DRMというのは、著作者の権利を保護するような制度のことですね?すみません、初歩的質問で。
kazuyoshikakihara
2007年11月17日 07:55
DRMは制度ではなくて、技術ですよ。
Windows XPのアクティベーションみたいに正規ユーザーでないとソフトを使えなくしたり、音楽ソフトを正規のライセンスがないと再生できなくしたりといった類の技術の総称です。
人の良心や、法律で著作物が守れそうにないなら、著作物を守る技術で何とかしてやろうということですね。
DRMが付いていると、ユーザーは概して不便な思いをするということは理解しているのですが。

この記事へのトラックバック